初期刀が裏切らない理由はプレイヤーによって様々だと思うけど、自陣のむっちゃんが裏切らない理由の一つは、未来の本(特にSF)をたくさん読んで「歴史はつじつま合わせをする」論理にハマったから。

「歴史はつじつま合わせをする」それは、タイムマシンで過去へ飛んで過去の出来事や人に干渉し、未来を変えようとしても、歴史がつじつま合わせをしてくるために大筋の結果は変わらない、という考え。
例えば、本来死ぬはずだった人を救い出したとしても、「歴史がつじつま合わせをしてくる」ために結局はさほど遠くない日に別の原因で死んでしまうし、逆に生きて偉業を成し遂げるはずだった人を亡きものにしても、やはり「歴史がつじつま合わせをしてくる」ために、他の誰かがその人に変わって偉業をやり遂げるため、「やり遂げた人」は変わっても「やり遂げた結果」そのものは変わらない。

歴史がつじつま合わせをしてくるのは、「人」ではなく「結果」。
だから、本来生命を落とすべき人が生き残ると「その人が生命を落とす」という結果のつじつま合わせをしてくるし、本来生きるべき人が死ぬと、「その人が成し遂げるはずだった」結果のつじつま合わせをしてくる。
かわぐちかいじ氏の「ジパング」は、歴史が人の死のつじつま合わせをしてきた例の一つ。
現代から第二次世界大戦の只中へとタイムリープしてきた主人公たちが、山本五十六元帥を死の運命から救い出したけれど、元帥は結局のところ、わずか二時間後に銃で撃たれて命を落としてしまう。
逆にそれを応用し、歴史に任せず自分から「結果のつじつま合わせ」をすることによって、「人」の未来を変えるのを目こぼししてもらったのがドラえもん。

ともあれ、この考えでいけば。
もしもむっちゃんが過去へ戻って龍馬さんを救い出したとしても、歴史が「龍馬さんの死という結果」のつじつま合わせをしてくるために龍馬さんは結局近い日に別の原因で命を落とすことになってしまうし、また運良く(?)生き残らせることが出来たとしても、つじつま合わせが変な風に働いて、龍馬さんの功績も活躍もごっそり他の誰か他の人のものとして書き換えられ、歴史の隅に埋もれ忘れ去られてしまうかもしれない———変えられた未来が、修正者の都合の良いようなものになるとは限らないので。

けれど、過去を変えなければ。
その肉体が滅んでも、彼の名を、功績を、あるいはその志を語り継ぐ人々の心の中で、龍馬さんはいつまでも「生き続ける」ことが出来る。
儚い生命しか持たぬはずの人が、久遠の命を得ることが出来る。
それが叶うのは、他ならぬ「今」の歴史、「今」の世界だからこそ。
それを知っているから、むっちゃんは歴史に干渉しようと思わないし干渉を許さない。


ちなみに、歴史がつじつま合わせをしてくれなかったらどうなるか? を表した一例が、ちょっと古いけどスタートレック1stの「危険な過去への旅」。
時空の門をくぐり、過去のアメリカへ渡ったエンタープライズ号のクルー達は、自動車に轢かれる寸前の女性を助ける。だがそのために未来が書き換わり、戻った世界は独軍の支配下に置かれてしまっていた。
実は彼らが救った女性は平和論者であり、「本来なら彼女が成し得なかった未来」に世論を平和論で動かして、当時の大統領をも説得し、アメリカの参戦を一年遅らせていた。
その参戦の致命的な遅れが、ドミノ倒しのように連合軍の敗北に繋がっていたのだった。
それを知った彼らは、意図せず変えてしまった未来を元通りに戻すため、過去への干渉を「なかったこと」にして未来改変を阻止した。……すなわち、今まさに命を落とそうとしている女性をそのまま見殺しにすることで。

過去を変え、なおかつ歴史がつじつま合わせをしてくれなかった場合、大体は悪い方へ———過去を変えた者が「こうなって欲しい」と願った方とは逆の方向に転がるという一例。