むっちゃんが度々口にする「銃」と「刀」、そして基本穏やかなむっちゃんが唯一嫌悪を露わにする「新撰組」について、前回のむっちゃんと銃と刀も踏まえて検証してみました。


むっちゃんが「刀」と「銃」について、直接言及しているセリフは今のところ、以下のものが挙げられます。
銃は剣より強し、じゃ

———刀剣乱舞ONLINE『攻撃』より引用

土佐じゃー名刀として評判やったがやけど、龍馬の時代じゃ、もう刀は時代遅れじゃった。

———刀剣乱舞ONLINE『刀帳』より引用

時代は拳銃ぜよ。やっとうなんて、時代遅れじゃ

———刀剣乱舞ONLINE『本丸』より引用

今更やっとうの稽古をしても仕方ないがか?

———刀剣乱舞ONLINE『手合せ(汎用)』より引用
これらのセリフからは、新しもの好きゆえに新時代の武器(銃)を重用する気持ちと、龍馬を守れた銃を上に・守れなかった刀(=自分自身)を下に置く気持ち——大切な龍馬を守れなかった自分自身への、ある種蔑視とでも呼ぶべき複雑な想いが読み取れます。

また、「やっとう」は通常は剣術そのものを指す言葉らしいのですが、
銃を使えん状況やったら、普通に剣術使うに決まっちゅうやんか

———刀剣乱舞ONLINE『手合せ(対和泉守兼定)』より引用
と「やっとう」と「剣術」を使い分けているところを見ると、彼がここで言っている「やっとう」は、彼が”古い”とする「刀を使っての戦い」そのものを指しているんじゃないかと思われます。
だからこそ、やっとうを「時代遅れ」「いまさら稽古をしても仕方がない」と下げているのじゃないだろうか、と。

さて。
むっちゃんは新撰組について、次のようなことを言っています。
新撰組の刀とは喧嘩になりそうぜよ。あいつら、時代の流れについていけんかったけのう

———刀剣乱舞ONLINE『本丸』より引用
他の本丸セリフとも合わせて考えるに、これは他者のいない、審神者(=プレイヤー)と二人きりの空間だからこそ出てきたむっちゃんの本音なんだろうと推測出来ます。
普段の陽気なしゃべり方とは全くベクトルの異なった、蒼昏い怒りと憎しみの炎がちろちろと舌を覗かせているその口調からは、龍馬とそっくりな姿をとっていながら普段はその名を口に出すことがないむっちゃんの秘めたる想いが——最愛の主・龍馬を失った悲哀と、それを上回る殺戮者たちへの瞋恚が伝わってくるようです。

ではむっちゃんは新撰組に属する者たち全員に憎悪の念を抱いているのかというと、それもちょっと違うかな、という気がしています。

注目したいのは先述のセリフのこの部分。

あいつら、時代の流れについていけんかったけのう

龍馬を手にかけたのが京都見廻組だったにしろ、新撰組だったにしろ、他の誰かの仕業だったにしろ、一つだけ確実に言えるのは「龍馬は時代が変わるのをよしとしない者たちに殺された」ということ。
つまりむっちゃんにとって、龍馬の命を奪った者たち——「新しい時代を受け入れない、旧き時代に縛られた者たち」全てが憎むべき対象であり、新撰組もその「旧き(=幕府側の)者たち」の一つだからこそ「喧嘩になりそう」と言ったのじゃないかと見ています。
隊員一人一人に対してではなく、新撰組という組織そのものに。

けれど。
わしが長か!? おんしゃあ、わかっちょるのう!

———刀剣乱舞ONLINE『編成/隊長』より引用
龍馬から長の気質をも受け継いだむっちゃんにとって、その憎悪を新撰組の隊員刀たちにぶつけたり、ましてや彼らを差別して扱うなど以ての外のこと。
彼らは龍馬の悪口も言わないし、こちらを挑発したりもしていないのだからなおさらに。
そのことは隊員刀たちとの、蟠りを感じさせない手合せセリフからも伺えます。

そしてだからこそ、どうして長曽祢虎徹にだけは辛辣な物言いをするのかも見えてきます。
彼は新撰組局長である近藤勇の刀。つまり自分と同じ、長としての使命を背負う刀。
自分と対等の立場であり、なおかつ「新撰組」の看板を背負う彼だからこそ、審神者にだけ見せていた本音を彼にだけは顕にしているのかもしれません。

同じ地平に立つ者として長曽根へと向ける目線は、このセリフからも伺えます。
長曾祢虎徹:ここで……ここで流れを変えられれば!
陸奥守吉行:やめちょき、やめちょき。ほがなことをしたち、なんちゃーじゃ変わりゃーせんちや
長曾祢:黙れ……! お前に何がわかる!
陸奥守:おまんの言うちょるのはただの感傷じゃ
長曾祢:黙れ……黙れ……
陸奥守:おまんの元主は、銃に撃たれてここに来れんかった。時代は、刀から銃に移っとったんじゃ
長曾祢:そんなの……言われなくたってわかってるんだ……!
———刀剣乱舞ONLINE『回想「近藤VS竜馬」』より引用
時代は刀から銃へと——旧き時代から新しき時代へと既に流れていた。
けれど長曽根の元主はそれを拒み、旧き時代をそのままにとどめようとしたために、新しい時代の象徴である銃に撃たれて命を落とした。
旧きものに縛られ、時代の流れを頑なに拒否する長曽根の元主は、新しい時代には決してたどり着けない。——例え、何度やり直したとしても。

長曽根の元主の不動不屈の意志を知り、その信念の固さにある種賞賛の念を抱いているからこそ、むっちゃんはことさら辛辣にこう言い放ったのじゃないかと思います。
中途半端に介入したとしても、彼の意志も運命も変えられない。それを認め受け入れ、隊員刀たちの長としてどんな時でも毅然としてあれ、と。


……

時代は拳銃ぜよ。やっとうなんて、時代遅れじゃ

むっちゃんにとって、「銃」は新しい時代の象徴であり、「刀」は旧き時代の象徴。
さらに、
長曾祢虎徹:剣を合わせれば自ずと相手の心中も見えてくる。お前は……
陸奥守吉行:さて、どうかのう? 心中を察したいがやったら言葉を交わしたほうがええと思うけんど

———刀剣乱舞ONLINE『手合せ』より引用
対話で解決を図ろうとするもの=龍馬は新しい時代の象徴であり、剣=力で語ろうとする新撰組は旧き時代の象徴。


龍馬が目指した新しい時代と、龍馬を殺した旧き時代。
むっちゃんが好むのは「新しいもの」、むっちゃんが憎むのは「旧きもの」。


龍馬の命を助けた、新しい時代の象徴「銃」と———、龍馬を助けられなかった旧き時代の象徴「刀」すなわち「自分自身」。

銃は剣より強し、じゃ

———刀剣乱舞ONLINE『攻撃』より引用
これは、ブルワー・リットンの戯曲『リシュリュー 』にある”The pen is mightier than the sword”——ペンは剣よりも強し——をもじったもの。
リシュリューが発表されたのが1839年、龍馬の生没年が1836年〜1867年なので、もしかしたら龍馬も生前どこかで触れたことがあるこの一文を戦闘の時に頻繁に口にするむっちゃん。

旧きものへの憎悪の念は、もしかしたら彼自身にも向いていて、だからむっちゃんは旧い時代の象徴である自分(刀)の色を消して、新時代の象徴である元主・龍馬さんを丸ごと写しているのかも。