土佐弁で二次創作する時、どこまで変換すればいいか。結構悩むポイントだと思います。
やるからには出来るだけ正しい土佐弁に近づけたい。でも、土佐弁に詳しくない読者が見ても注釈なしですぐに分かるようにはしておきたい。
文章のどこまでを土佐弁に変換して、どこまでを標準語のままにしておくか。個々人によっていろいろなやり方があると思いますが、とりあえずの目安のひとつとして、個人的な変換方法を載せてみました。


■ 変換するときの考え方二つ

本題に入る前に、土佐弁に詳しくない場合と詳しい場合、二つの立場からの変換について考えてみたいと思います。

1. 普段は標準語を使っていて、土佐弁はあまり分からない・そこまで詳しくない場合

この場合、変換は標準語に土佐弁を「盛っていく」形で行われることが多いのではないでしょうか。

例1:
「目的はサンシュユを探すことだから、そんなに急ぐな」
      ↓
「だから」は土佐弁で「やき」。早速変えよう
      ↓
「目的はサンシュユを探すことやき、そんなに急ぐな」
      ↓
「そんなに」も「ほがぁに」にして……、
      ↓
「目的はサンシュユを探すことやき、ほがぁに急ぐな」
      ↓
あっ、「急ぐな」も土佐弁に変換できる!
「〜するな」は土佐弁で「〜すな」になって、「急ぐ」+「〜すな」で「急ぎな」になるから……、
      ↓
「目的はサンシュユを探すことやき、ほがぁに急ぎな
      ↓
変換完了!

2. 土佐弁を日常的に使っている・熟知している場合

では、普段の会話などで日常的に土佐弁を使っていて標準語ももちろん普通に使いこなす方、例えばドラマやアニメ、ゲームなどの土佐弁指導の方々の場合はどうなるのでしょうか。
実際自分がその立場になったことがないので想像するしかありませんが、インタビュー記事などを読んでいると、例1とは逆に一度作った土佐弁文章の中から意味の通りにくい部分を削って、削ったところに標準語を埋め込むという作業が行われているのではないかと思います。

例2:
「お前がせっかちなだけだろ」
      ↓
おまんいられなだけじゃろ」
      ↓
「いられ」が「せっかち」という意味だとすぐに分かってもらえるだろうか? これは不特定多数のお客さまが見るものだから、全員が全員土佐弁に詳しいとは限らない……、それなら「せっかち」はあえて土佐弁にせず、標準語のままにしておこう
      ↓
「おまんがせっかちなだけじゃろ」
      ↓
変換完了


これらをふまえてゲームの土佐弁を見ていくと、土佐弁に変換されているのは

「わし、おまさん、などの人称代名詞」
「ぜよ、〜じゃのう、などの語尾系」
「〜しゆう、〜しちゅう、などの進行形」
「こがな、ほがな、などの指示代名詞」
「ほんなら、まっこと、〜せん、のうがわるい、などの特徴的な言い回し」


これでだいたい全部だということが分かります。
つまり名詞や動詞などはあまり変えられてないということで、この法則に添って変換すれば、オフィシャルな方言指導の方が変換した土佐弁に近いものが出来るのではないでしょうか。


■ はじめての土佐弁変換

実際に土佐弁に自力変換する時のおすすめ手順はこちらです。

1. 土佐弁を学ぶ

最初に基礎知識を身につけておくと、のちのちの自在な土佐弁創作だけでなく、コンバータで変換した文章をチェックする時にも大変役立ちます。
イチオシのおすすめは、ツイッター上で土佐弁講座を開いてられる土佐弁陸奥守先生土佐弁陸奥守先生講座総集編
かわいいまんがやイラストがふんだんに使われているので、見て読んで楽しく土佐弁を学ぶことが出来ます。

2. コンバータを使う

土佐弁の基礎を学んだら、いよいよ変換作業に入っていきます(とにかく時間がない時・今すぐ土佐弁の作品をアップしたい時などは、1.の手順を飛ばして2.から入るのももちろん可能です)。
とはいえ、文章の最初から最後まで自分の力だけで変換するのはなかなか大変なもの……
そこでおすすめなのが各種土佐弁コンバータ
どんな長い文章も一瞬で変換してくれるので、とても便利です。
個人的なおすすめは「恋する方言変換」さん。手直しするところが少なく、また他の変換サイトではなかなか出てこない「ぜよ」変換もしてくれます。

3. コンバータで変換した文章を手直しする

コンバータはやはり機械での自動変換なので、多少の手直しが必要になります。
ここで役立つのが1.で学んだ基礎知識。文章のつながりや語尾などを見て、適宜修正を加えていきます。

これで変換作業は完成です。


それでは、実際にコンバータを使って変換&手直し作業をしてみます。
※コンバータを使わない変換はこちら⇒創作用土佐弁変換テンプレート・簡易版

4-1. 変換作業例1(コンバータ使用)

最初の文例はこちら。活撃の坂本龍馬のせりふです。


いい刀だろ。兄上に頼み込んで譲ってもらったんだ
土佐じゃあ少しは知られた名刀だよ
けれど、鉄砲の前じゃあ役に立たない
これからの時代は鉄砲があればいい、そう思っていたのになあ
いざ握れないようになったら、まるでこの身体の半分奪われたように感じる



これを「恋する方言変換」で土佐弁に変換します。


ええ刀やろ。兄上に頼み込んで譲ってもろうたんや
土佐じゃあちっくとは知られた名刀ちや
けんど、鉄砲の前じゃあ役に立たん
これからの時代は鉄砲があればええ。そう思うちょったのになあ
いざ握れんようになったら、まるでこの身体の半分奪われたように感じる


このままでもほぼ使えますが、番組中のせりふに合わせてちょっとだけ手を加えてみます。

まずは、語尾の「や」を「じゃ」に変えます。
「やろ」も「や」の部分を「じゃ」にして、「じゃろ」に変えます。


ええ刀じゃろ。兄上に頼み込んで譲ってもろうたんじゃ
土佐じゃあちっくとは知られた名刀ちや
けんど、鉄砲の前じゃあ役に立たん
これからの時代は鉄砲があればええ。そう思うちょったのになあ
いざ握れんようになったら、まるでこの身体の半分奪われたように感じる


次に、これも本編中で使われている台詞に合わせ「もろうたんじゃ」の「ん」を「が」に変えます。
「が」に変えられる「ん」は、「の」に置き換えても通じるかどうか(もろうたんじゃ・もろうたのじゃ)で見分けられます。


ええ刀じゃろ。兄上に頼み込んで譲ってもろうたじゃ
土佐じゃあちっくとは知られた名刀ちや
けんど、鉄砲の前じゃあ役に立たん
これからの時代は鉄砲があればええ。そう思うちょったのになあ
いざ握れんようになったら、まるでこの身体の半分奪われたように感じる


最後に細かいところを直していきます。
「思っていた」は現在進行形「思いゆう」の過去形「思いよった」なので、


ええ刀じゃろ。兄上に頼み込んで譲ってもろうたがじゃ
土佐じゃあちっくとは知られた名刀ちや
けんど、鉄砲の前じゃあ役に立たん
これからの時代は鉄砲があればええ。そう思いよったのになあ
いざ握れんようになったら、まるでこの身体の半分奪われたように感じる


原文はこちら。
多少の差異はありますが、比べてもそれほど大きく離れてはいないのではないでしょうか。

ええ刀じゃろ。兄上に頼み込んで譲ってもろうたがじゃ
土佐じゃあちったあ知られた名刀ぜよ
けんど、鉄砲の前じゃあ役に立たん
これからの時代は鉄砲がありゃあええ。そう思いよったににゃあ
いざ握れんようになったら、まるでこの身体の半分奪われたように感じる

———活撃刀剣乱舞『第九話』より引用


4-2. 変換作業例2(コンバータ使用)

次の文例はこちら、活撃の陸奥守吉行のせりふです。


握れなくても、使えなくても、傍らで、その時まで。見せてやってくれ
俺は、お前の生き様が好きだから



文例1と同じように「恋する方言変換」で土佐弁に変換します。


握れいやけんど、使えいやけんど、傍らで、その時まで。見せちゃってくれ
わしゃ、われの生き様が好きやき


本編中で使われている台詞に合わせて、「われ」を「おまん」に変えます。


握れいやけんど、使えいやけんど、傍らで、その時まで。見せちゃってくれ
わしゃ、おまんの生き様が好きやき


誤変換と思われる「握れいやけんど」「使えいやけんど」を修正します。
「、」を入れずに変換すると「握れいでも」「使えいでも」とかなり良くなるので、この「、」が原因のひとつになっているようですが、とりあえずしゃんしゃん直していきます。
「〜しない」は土佐弁で「〜せん」なので、まずは「握れん」「使えん」にし、その後に続く「ても」を「でも」に(握れんても・使えんても⇒握れんでも・使えんでも)します。


握れんでも使えんでも、傍らで、その時まで。見せちゃってくれ
わしゃ、おまんの生き様が好きやき


原文はこちら。

握れんでも、使えんでも、傍らで、その時まで。見せちゃってくれ
わしは、おまんの生き様が好きやき

———活撃刀剣乱舞『第九話』より引用